先日、常連のお客様からこんな言葉をいただきました。「後藤さん、このタレ、何が入ってるんですか。毎回食べるたびに気になって。」
正直に言います。その問いに、私はにやりとしてしまいました。嬉しかったからです。「気になる」というのは、それだけ舌に刻まれたということですから。
今日は少しだけ、普段お客様には語らない「裏側」をお話しします。魔法のつけだれのこと。鳳来牛のこと。そして、「加熱しているのに、レアです」という一見矛盾したこの言葉の意味について。
こんな方におすすめ
- ✅ 元祖レア牛丼「頂」がどんなこだわりで作られているか知りたい方
- ✅ 鳳来牛という愛知のブランド牛について深く知りたい方
- ✅ レア牛丼の安全性に疑問を感じていて、来店前に確認したい方
- ✅ 接待や記念日に使うにあたって、料理のストーリーを語れるようになりたい方
- ✅ 名古屋・大須でまだ知られていない本物の一軒を探しているグルメ探訪層

魔法のつけだれは、碧南の白醤油から始まった
「魔法のつけだれ」と呼んでいるオリジナルレシピの主役は、愛知県碧南市の白醤油です。
碧南といえば、白醤油の産地として全国的に知られています。普通の醤油より色が薄く、素材の色を活かした料理に使われることが多い。でも私がこれを選んだ理由は、色だけではありません。白醤油には、ほかの醤油にはない独特の甘みと、ふくよかな香りがあります。牛肉の脂の甘みと、驚くほど相性がいい。
このベースに、ワインと現代の調味料を組み合わせてオリジナルレシピを組み上げました。参考にしたのは、明治時代から続く牛丼のレシピ群です。「吉野家の牛丼がなぜあの味なのか」「すき焼きのタレとはどう違うのか」——そういった問いをひとつひとつ解体して、「頂」という一杯だけのために再構成した。
このタレが完成するまでに、何度試作したかは覚えていません。ただ確かなのは、鳳来牛という肉のポテンシャルを最大限に引き出すために設計されたタレだということです。単体で舐めても美味しい。でも鳳来牛の薄切り肉が乗ったときに、初めて「完成」する。そういうタレです。
鳳来牛という名前を、知っていますか
岐阜には飛騨牛があります。三重には松阪牛があります。では愛知のブランド牛といえば?
即答できる方は、名古屋にもまだ多くありません。それが「鳳来牛」です。
愛知県奥三河、鳳来地区で育てられる黒毛和牛。年間の出荷頭数はわずか300頭。生産農家はたった3戸。全国に流通する量は極めて少なく、名古屋市内で提供できているのは現在、うち「頂」だけです。
鳳来牛の最大の特徴は、飼料に混ぜ込まれる「酒粕」にあります。使用されるのは、愛知を代表する銘酒「蓬莱泉・空」の酒粕。手作業で丁寧に混ぜ込まれた飼料で育った鳳来牛は、サシと赤身の両方に個性があります。霜降りだけの柔らかさでもなく、赤身だけの力強さでもない。両方の良さが一頭のなかに共存している——これが稀有なんです。
この肉質だからこそ、「レア感」を活かした調理に向いている。薄切りにして、魔法のつけだれをくぐらせたとき、その繊細な味わいが最も際立つ。鳳来牛と出会ったとき、「これがあの調理技術と組み合わさったら」と確信しました。
✓ ここまでのポイント
- 魔法のつけだれは愛知・碧南の白醤油をベースに、明治時代の牛丼レシピを研究し尽くして作られたオリジナルレシピ
- 鳳来牛は愛知県奥三河産・年間300頭・農家3戸のみが育てる希少黒毛和牛。銘酒「蓬莱泉・空」の酒粕飼育がサシと赤身両方の個性を生む
- 名古屋市内でこの鳳来牛を提供できているのは、現在「頂」だけ
「加熱しているのに、レアです」——この矛盾の正体
お客様から最もよく聞かれる質問のひとつが、「レアって、生じゃないんですか。お腹を壊しませんか」というものです。
正直に、明確にお答えします。頂のレア牛丼は「生」ではありません。
中心温度70℃以上での加熱を、二段階に分けて行っています。食品衛生法の基準を完全に満たした上で提供しています。これは妥協ではなく、技術です。
一段階目の加熱で肉の内部まで熱を通しながら、二段階目の処理でその食感と色合いをコントロールする。「加熱されているのに、レアを感じさせる」——この矛盾のように聞こえる一文が、実は頂の調理哲学の核心です。
私は中学・高校で理科の教員免許を持っています。食材の温度変化が肉のたんぱく質にどう作用するか、という問いは、科学的な好奇心と料理人としての探求心が重なる場所にあります。25年の業界経験のなかで、この技術を磨き続けてきました。「安全で、なおかつ美味しい」は、どちらかを犠牲にするものではない。両立できると信じているから、この調理法にたどり着いた。
「食べログで保存だけしていて、ずっと行けずにいたんです。やっと来られて、本当に来てよかった。鳳来牛の一杯、忘れられない味です。」
食べログ口コミより(30代・女性)
全食材を愛知産で統一する、という哲学
タレの白醤油は碧南。玉ねぎは豊橋・へきなんの契約農家から季節ごとに。米は愛知県産ブランド「あいちのかおり」。卵は名古屋コーチン。海苔は日間賀島の三河湾産。たくあんは渥美半島の古式一丁漬け。大葉は豊橋の愛経1号。みそ汁は岡崎の八丁味噌に、渥美半島のあおさ。
一杯の丼に、愛知の地図が詰まっています。
これは「地産地消を謳えばブランドになる」という発想ではありません。食べる人・作る人・育てる人の三者が一枚の丼のなかで出会うとき、その一杯は単なる食事を超える——そう思っているからです。
玉ねぎひとつとっても、夏と冬では仕入れ先が変わります。「たま坊」や「へきなんサラダたまねぎ」など、季節ごとに最も状態の良い産地から調達します。炊飯器も年度ごとの米の出来に合わせて炊き分けができるハイテク機器を使っています。見えないところにこそ、こだわりが宿ると思っています。
「なぜ牛丼に2,600円を出すのか」という問いへの答えは、値段の話ではなく、この積み重ねの話です。ライバルは鰻屋だと思っています。値段ではなく、体験の質と、一杯に込められたストーリーで勝負する。それが「頂」という店の姿勢です。
「接待で連れて行ったら、鳳来牛のストーリーを話している間に相手の目が輝いて。料理が来る前から場が温まりました。またここを使おうと決めました。」
食べログ口コミより(40代・男性)
まとめ|この一杯に込めたもの
魔法のつけだれ、鳳来牛の希少性、二段階加熱技術、愛知産食材の統一——どれも、お客様の口に届くときには「ただの牛丼」として現れます。でも、その一口の後ろには、生産者との関係と、25年分の試行錯誤と、「牛丼の概念を、覆す」という信念が静かに立っています。
鳳来牛のレア牛丼は1日10食限定です。食べてみたいと思ってくださった方は、ぜひ事前にご予約をお願いします。食べログのご予約フォームの「ご要望欄」に【鳳来牛希望】とご記入いただくだけで確実にご用意します。
営業日は月・火・土・日・祝日の11:00〜15:00(ランチ専業)。毎月の営業カレンダーは公式Instagramでご確認ください。不定休がある場合もInstagramでお知らせしています。
大須の二階で、お待ちしております。
今すぐ予約(24時間受付)(ご要望欄に【鳳来牛希望】とご記入ください)
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