「頂で食べた牛丼、本当に感動したんだけど……友だちに話そうとしたら、うまく説明できなくて。鳳来牛って何?って聞かれて、なんか口ごもってしまって」
そういう声を、後藤はずっと受け取ってきました。食べログの保存数は2,989件。でも口コミは55件。この数字の差が、すべてを語っています。体験の質は確かに伝わっている。でも、それを言葉にする「語彙」が手元にない。だから保存したまま、発信できない。
今日は、後藤政之の一日を追いながら、その語彙をこの記事ごと持って帰ってもらおうと思います。鳳来牛とは何か。酒粕飼育とはどういうことか。なぜここだけなのか。開店前の仕込みから閉店後の振り返りまで、丸ごと見せます。
こんな方におすすめ
- ✅ 「頂」で食事をして感動したのに、誰かに話そうとすると言葉が出てこない方
- ✅ 鳳来牛・酒粕飼育という言葉を聞いたことはあるけれど、正確に説明できるか自信がない方
- ✅ SNSに投稿したい・接待の場で話のタネにしたいが、ストーリーを整理したい方
- ✅ 奥三河の生産現場から一皿が届くまでの流れを、まるごと知りたい方
- ✅ 鳳来牛が「なぜ年間300頭しか存在しないのか」という理由を知りたい方

午前9時。大須の2階に届く、奥三河からの肉
開店は11時。でも後藤の一日は、その2時間前には動いています。
矢場町駅から徒歩2分、大須4丁目の雑居ビルの2階。外から見ると看板は控えめです。でも扉を開けた瞬間から、空気が変わる。この日も、保冷状態のまま届いた鳳来牛の荷を受け取るところから仕事が始まりました。
「届いたとき、まず目で見て、手で触る。同じ鳳来牛でも、個体差があります。その日の肉の状態によって、切り方の角度も変える」
鳳来牛は、愛知県奥三河地方で育てられる黒毛和牛のブランドです。岐阜の飛騨牛、三重の松阪牛と並ぶ、愛知のブランド牛と言えば伝わりやすい。でも、数字を聞くと驚かれます。年間わずか300頭。しかも担い手は農家3戸だけ。その希少性の理由については、鳳来牛が希少な5つの理由|年間300頭・農家3戸の真実でも詳しく書いていますが、今日は後藤の口から直接聞いてみました。
「規模を広げようとしても、広げられない。それが鳳来牛なんです」
鳳来牛のことを誰かに話そうとして、言葉が出てこなかった経験はありませんか。公式Instagramでは、産地の様子・仕込みの裏側・今月の営業カレンダーを継続的に発信しています。読むだけで、次に話すときの語彙が一つ増えます。
「酒粕飼育」を、自分の言葉で説明できるようになるために
食材カードを眺めながら仕込みを進める後藤に、改めて聞いてみました。「酒粕飼育って、友だちに聞かれたらどう答えればいいですか?」
「蓬莱泉の酒粕を、餌に混ぜて手作業で育てています、って一言で十分です。蓬莱泉・空っていう日本酒、知ってますか?それを醸すときに出る酒粕を、飼料の一部として与えている。だから肉に甘みと香りが出る。アルコールが残っているわけじゃないけど、その風味が牛の体に乗り移ってくるイメージです」
蓬莱泉は、設楽町に蔵を構える関谷醸造の銘酒。「空」はその最高峰で、幻の日本酒とも呼ばれています。その酒粕で育った牛が、名古屋の大須に届いて一杯の丼になる。この一本の線を知っているだけで、誰に話しても「それは面白い」と返ってきます。
「農家3戸との関係は、僕が直接作ってきたものです。産地直仕入れというのは、価格交渉だけじゃない。どう育てているか、どんな思いで牛に向き合っているか、そこまで知らないと、お客様に語れない」
その関係性のより詳しい背景は、なぜ「頂」は奥三河の鳳来牛だけを使うのか|3戸の農家との約束に書いてあります。後藤が産地に足を運んで構築してきたサプライチェーンの話です。
✓ ここまでのポイント
- 鳳来牛は飛騨牛・松阪牛と並ぶ愛知のブランド牛。年間300頭・農家3戸のみが育てる希少な黒毛和牛。
- 蓬莱泉・空の酒粕を飼料に混ぜて手作業で育てるのが「酒粕飼育」。肉に甘みと香りが宿る理由がここにある。
- 「名古屋でここだけ食べられる愛知のブランド牛丼」この一言を持っていれば、SNSでも接待でも話が始まる。
酒粕飼育・農家3戸・年間300頭という数字を覚えたら、次は「今日食べられるか」を確認する番です。営業日は不定休があり、毎月の公式Instagramで最新カレンダーが更新されています。行く前に一度確認しておくと、空振りがなくなります。
午前11時。1日10食の制約が生む、緊張感と誇り
開店と同時に、鳳来牛レア牛丼の1日10食という制限が動き始めます。後藤は毎朝、この10という数字と向き合います。
「量を増やせばいい、と思うかもしれない。でも無理に数を増やせば、品質が落ちる。鳳来牛に限らず、全食材を愛知県産で統一しているのも同じ理由です。量より関係性を優先している」
今日の最初のお客様が席に着いたのは開店の数分後。鳳来牛レア牛丼・真骨頂(並)を注文されました。後藤はカウンター越しに、出来上がった丼を静かに置きます。
「加熱しているのに、レアです」
この言葉が、後藤の料理を一言で表しています。中心温度70℃以上をクリアする二段階加熱技術で、食品衛生基準を満たしながらレア感を残す。「生で出している」わけでは断じてない。それが25年のキャリアを持つシェフとしての技術の核心です。
「食べログに保存だけして、なかなか行けなかったんですが、思い切って予約して本当に良かったです。鳳来牛の説明を聞いてから食べると、全然違いますね」
食べログ保存ユーザー(来店後の声より)
保存2,989件に対して口コミ55件。この数字の非対称性に、後藤は複雑な思いを持っています。「体験してくれている。感動してくれている。でも、言葉にしにくいんだと思う。だから僕が語彙を渡さないといけない」という考えが、食材カードやストーリーを語る接客スタイルにつながっています。
午後2時。閉店前の「語彙を渡す」時間
ラストオーダーは閉店30分前の午後2時30分。でも後藤が一番大切にしているのは、お客様が食べ終わったあとの数分間だと言います。
「鳳来牛って何ですか、って聞いてくれたお客様には、ちゃんと話します。時間がある日は、産地の話まで。農家さんの顔も、思い浮かべながら話してます」
接待でこの店を選んだお客様には、席で話せるストーリーが一つ増えて帰る。SNSに投稿したいお客様には、キャプションの「語彙」が手元に残る。後藤が目指しているのは、そういう体験の設計です。
鳳来牛の味に加えて、魔法のつけだれの話も外せません。碧南の白醤油をベースに、ワインと現代調味料を組み合わせたオリジナルレシピ。醤油の産地まで愛知県にこだわった、徹底した地産地消の思想がここにも宿っています。愛知県産の食材だけで一皿を作り上げる哲学については、名古屋のストーリーあるランチ「頂」|鳳来牛と蓬莱泉の酒粕の真実にまとめています。
「ライバルは鰻屋だと思っています。牛丼という言葉から連想されるものを、完全に塗り替えたい」
この言葉が、後藤の哲学のすべてを要約しています。価格ではなく、体験で勝負する。「名古屋でここだけ」という事実を武器に、新名古屋名物としてのレア牛丼文化を、大須から発信し続ける。東海エリアのテレビ8番組に取り上げられてきたのも、その姿勢の積み重ねの結果です。
今日の体験を、自分の言葉で話すために
後藤の一日を追ってきて、改めてわかったことがあります。「頂」で食べた体験が語りにくかった理由は、体験の質が低かったからではない。語るための言葉が、まだ手元になかっただけです。
今日この記事を読んだあなたには、もう語彙があります。
鳳来牛は、岐阜の飛騨牛・三重の松阪牛と並ぶ愛知のブランド牛。年間300頭・農家3戸だけが育てる幻の黒毛和牛で、地元の銘酒・蓬莱泉の酒粕を飼料に混ぜて手作業で育てられている。名古屋でそれを食べられる店は、大須の「頂」だけ。
この一文を、次に誰かに話してみてください。きっと「それ、どこ?」と聞いてきます。
後藤はこの秋も、週4日だけ、大須4丁目の2階で火を入れ続けています。1日10食限定の鳳来牛レア牛丼は、予約が埋まる前に席を確保しておくことをおすすめします。営業日は毎月の公式Instagramで更新されています。
1日10食限定の鳳来牛レア牛丼は、語彙を手に入れた今だからこそ、一度自分の口で確かめてほしい一皿です。食べログからの予約は24時間受け付けています。鳳来牛の枠は早い時間から埋まるため、日程が決まったタイミングで押さえることをおすすめします。

コメント